<心(キモチ)>







年の瀬。
人の心は何処(いづこ)に・・・?



「何でさぁ。こう、ほかの人は幸せに見えるんだろう?」


そう呟かずには、居られない光景が、広がってる。



12月のイルミネーションがキラキラ光る街中を横目に見ながら、
早くにお仕事が終わったボクはタクシーで帰宅の途についていた。

綺麗に飾られた街。
その中を楽しそうに歩く恋人たち。
嬉しそうに待ち人を待つ恋人たち・・・。


素敵な光景だと思う。


でも。
それ以上に。

あの場所に居るのが、自分だったら・・・だなんて。
そう、思ってしまう。

見てたら、寂しくなる。


ボクは、寒そうな、でも『温かそう』な街から目を逸らせた。


でも・・・。
やっぱり、見ちゃうんだよね。

何でだろ?



「あ・・・」


あの人、今待ち合わせてた彼が来たんだ。


「・・・あ」


あの子、おっきなミッキー買って貰ったんだ。
嬉しそうに抱えてる。


幸せな。温かい空気が。
この街を。
キラキラ光るこの街を包んでる。


「すいません・・・ちょっと早いけど、此処で降ります」


この街を、独りで歩くにはちょっと寂しいけど。
この暖かさに包まれるのも、好いかも知れない。






「寒ぅ・・・」

自販機で、ホットココアを買って。
飲まずに、手で転がしながら光と幸せに包まれた街を歩く。


「あ、あの服、ヒロに似合いそう」

ショーウインドーに飾られた服を見て、思わず呟いた。





 『ホント。似合いそうだね♪』

 『流石大ちゃん。自分の服よか俺の服選ぶ方が上手いんぢゃない?』

 




・・・は!?




今、何か声が・・・。

自分の声と、ヒロの声が・・・まさかね。





 『やだなぁ。まさかだなんて』

 『おーい。此処、此処』

 「・・・・・・へ」




疲れてるんだ。きっと疲れてるんだ、ボク。
だって・・・だって目の前に。


羽の生えた、ちっちゃいボクとヒロが、
ピヨピヨ飛んでる・・・。


 『いやだから。疲れてるとかそう云うんぢゃなくって』

 『ねぇー大ちゃん。飛んでるの疲れるから、手に停まらせて?』

 「・・・はぁ」



きっと、夢だ・・・。

人気の少ない場所を探し少し歩いたボクは、
ちっちゃいaccessを手に抱えて、
今日は閉店されたと思われるお店の前を拝借して腰掛け、
まじまじと『彼等』を見詰めた。



 「で・・・」

 『ボク等が何者か、気になるんでしょ?
「何だこいつら?」って想ってるでしょ?』



おっ・・・。
想っていた事をズバリ言い当てられ少し言葉が詰まる。

ふと、小さいヒロを見遣ると、少し冷めたココアの缶で遊んでる。
そして。小さな、羽を背負ったボクが徐に口を開いた。


 『ボクはね。君の心』

 「へ・・・?心?」



・・・やっぱり夢だ。絶対そうだ。

 『あっ!!まだ信じてないでしょ!?
今「絶対夢だ」とか想ってるでしょ〜!!』

 「何でわかったの!?」

 『だから、ボクは君の心なんだって。
君が心に想うこと、全部判るに決まってんじゃん』

 「あ、そうか・・・」





夢でも何でも良いや。信じるしかないかも。





 「ボクの心って、こんななんだ・・・羽、似合うね〜」

 『自分で云う?』

〈ボクの心〉はクスリと笑ってこう続けた。




 『でもね。ボクがこんな格好で居られるのは、
君が何時までも純粋で居てるからなんだよ』



 「え?ど、ういうこと?」

 『んー。「心の汚れたヤツ」って奴の心は醜いの』

 「・・・判りにくい」

 『そりゃそうだ。見てみりゃ判るよ。
・・・あそこに幸せそうなカップルが居てるでしょ?』



〈ボクの心〉は、少し遠くに居るカップルを指差した。



 『うわっ!!大ちゃん大ちゃん。あの女の子、何股もしてるねぇ。
あの彼、4番目位じゃない』


小さいヒロが吃驚した声で、そう云った。


そういや・・・この小さいヒロ、抑揚までヒロと一緒。
この小さいヒロは何なんだろ?



 『そう・・・あの女の子の心、見せてあげようか?』

 「・・・え」



そう云う〈ボクの心〉を見詰める・・・と、彼はこう続ける。



 『もう一回、あの子見て御覧?』

 『吃驚するよぉ〜大ちゃん』

 「へ・・・うわっ・・・ホントぉ?アレ・・・」





ボクが見たのは、彼女の頭上に漂う・・・ヘドロの様な心。




 「え、エグイねぇ・・・」

 『でしょ?・・・君は、ホント純粋だね。ちゃんと、心で恋愛してる・・・ね?ヒロ♪』

 『うん。それに、〈その相手〉もそれに応えて負けじと純粋に恋愛してるもんね』

 『純粋、ってかヒロの場合単純なんじゃない?』

 『大ちゃん、酷い・・・』





何か勝手におしゃべりし始めたちっちゃいaccess。




そっかぁ・・・。
ボクが、本気で好きで居てるって・・・そーいう事か・・・。





 『あ、だから。寂しくても、辛くても。・・・』

 『大丈夫だよ!!大ちゃん。・・・独りじゃ、ないんだからさ!!』



〈ボクの心〉の言葉尻を、ちいさいヒロが繋いだ。



 「ん・・・そうだよね・・・」



何だか・・・シャンとしなきゃ!!


 「あ、そうそう・・・何で、此処にちっちゃいヒロが
・・・ってか、このヒロ・・・」

 『オレ?・・・オレは大ちゃんのダーリンの〈心〉よぉ。
んで。何で此処に居ると想う?』

 「何でって・・・何で?」

 『ボク等が、一緒って事は、君達は何時も心で呼び合ってるの。
これって、凄い事だよ?』

 「・・・でも、〈ヒロの心〉が、肝心のヒロの元を離れちゃって良いの?」



 『離れてないよ・・・此処に居るんだから』

 「離れてないよ・・・此処に居るんだから」







ヒロの声が二重に聞こえる。






 「大ちゃん。ココア、冷えちゃったでしょ?」





振り向くと。
ココアの缶を二つ持って。
大好きな人が、微笑んでいた。




 「ヒロっ!?」


嘘・・・何で・・・。






−−−−−−『ボク等が、一緒って事は、君達は何時も心で呼び合ってるの。
これって、凄い事だよ?』







 「ヒロぉっ!!」




どうしよう。凄く嬉しい。




ボクを 包んでくれる。
腕が。
温かくて。
泣いちゃいそう・・・。




 「風邪ひいちゃうよー・・・ホラ」





ヒロが空を見上げた。







「・・・雪」





気付けば。
ボク等の〈心〉は、目の前から消えていた。





ボク等は、人気が少ないことを好い事に、そっと手を繋いで歩き出した。
何だか、胸が温かくなった様な。
そんな気がした。






この先。
何があるか判らないけど。


神様が、どんな試練を。
どんな罠を仕掛けてくるか判らないけど。


乗り越えてみせる。

だって。

ボクはこんなにも彼が好きだから。
全身で、恋愛してるから。
こんなにも、恋焦がれてるから。



純粋に。
愛してるから。




君と。
一緒だから。






*fin*




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2000hitsリクのイラストをお贈りした大水鴉貴之さんより、
お返しとして素敵なSYNC小説をいただいちゃいました!!
あのイラストを見て「ピコンとインスピレーションが沸いて」
書いてくださったとのことなんですが…。

きゃぁぁぁーーーーーーーーーーっっvv
「降りて」きましたか!!(笑)
めちゃくちゃツボなんですけど!!!!!

あまりにも素敵だったので、
無理言って飾らせていただいちゃいましたv
ああ、ほんとに可愛い〜〜vv
微妙に2人が関西弁喋ってるのもまた可愛いですねvv(笑)

ほんとにこんな<心>の天使がいたら
離れている隙にうっかりさらってしまいそうです。
しかも2人まとめて。(笑)

自分の描いたイラストからイメージを膨らませて
これだけの世界を書いていただけるなんて
絵描き冥利に尽きますわ!

大水さん、素敵な小説をありがとうございました〜vv

   * * *     

掲載にあたってとーまが勝手に改行を入れてしまったため、
雰囲気を損ねてしまっていたら大変申し訳ありません;(汗)

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